2008年07月14日

Lost Odyssey

実家から帰る電車で昨日買った小説を読みながらきたダッシュ(走り出す様)
タイトルは『永遠(とわ)を旅する者〜ロストオデッセイ〜』元はXbox360から出ている『LOST ODYSSEY』なのだがこの本はゲームとは別の物語となっている。




この本はいくつもの物語が短い短編で書かれている。
主人公は『カイム』。永遠の生を生きる―すなわち、死ねない男。
物語の舞台はすべて、一千年の旅をしてきたカイムが訪れた「いつか、どこか」の町である。



この本を読むきっかけとなったのは、本屋で目にしたこの言葉だった。

彼は老いず、ただ去りゆくのみ。
彼は死なず、ただ別れるのみ。
その寂しさ―あんたにわかるかい?



キャラクターデザインは『スラムダンク』『バガボンド』の井上雄彦さん、総指揮は『ファイナルファンタジー』を手掛けた坂口博信さん、そしてこの本を書いた重松清さんと期待せずにはいられないものだった。
そして、その期待を裏切ることなく話は進む。



日記としてはとても長くなってしまうからやめようか悩んだけれど、たくさんの人に読んでもらいたいから一つだけ話を載せたいと思う。俺なりにまともて書くが、長いので時間のあるときに読んでください。


タイトルは『光の雨』



「もうすぐ、光の雨がふるよ」
少年は夜の海を指差して言った。
「光の雨?」
カイムが聞き返すと、少年は「そう、夜中になると、海のずっと沖のほうに降るんだ」と答え、「とてもきれいなんだよ」と屈託なく笑った。
「光の雨、か・・・・」
少年は生まれてから十年間、一度も島の外に出たことがなかった。
少年が暮らしているのは、丸太舟で出かける漁と、森の果実を収穫すること以外には生計を立てるすべのない、小さく、そして貧しい島だった。夜明けとともに目覚め、満天の星を眺めて眠る、単調な毎日―それがなににも勝る幸せだということを、少年はまだ、知らない。


少年は水平線の先にある大きな島―というより、広大な大陸に憧れている。大人になり「あの国」にいき、がんばって働き、美味しいものを腹いっぱいに食ってやるんだと言う。
少年は信じているだろう。「あの国」で待ちうけている幸福を。けれど―少年は、「あの国」のことを、なにも知らない。


少年が満月の夜に一番美味しくなる果実を持ってきた。
「これ、なんていう名前なんだ?」
「笑っちゃうよ、大げさで。『幸せの粒』っていうんだ」
「・・・・・・いい名前だよ。」
カイムは「幸せの粒」にかぶりついた。「あの国」のリンゴに似た形だったが、それよりも二回りほど小粒で、そのぶん甘みとみずみずしさが凝縮された味だった。
「おいらも大好きなんだけど・・・でもさ、「あの国」には、こんなものよりもっと美味しい食べ物がたくさんあるんだろう?」
カイムはそれに答えず、「幸せの粒」をもう一口かじった。
少年の言うとおり、「あの国」には、「幸せの粒」よりもっと美味しいものはたくさんある。
正確には―かつて、あった。
「あの国」は、いま、戦場になっている。半年ほど前にいくさが始まった。
少年が夜ごとに光の雨を見るようになったのは、この頃からだった。


「あの国」は、繫栄をきわめていた。きらびやかな幸せは金さえ出せばなんでも手に入ったし、力さえあれば金のいくらでも手に入った。
そして拡大し、膨張しつづけることでしか、欲望を満たせない「あの国」の偽政者は、隣国にいくさを仕掛けた。


「もうすぐだよ」
少年はまた、海を見つめる。「もうすぐ光の雨が降るんだ、海のうんと遠くで」―屈託なく笑う。


いくさは、すぐに終わるはずだった。圧倒的な富と力があれば、隣国をねじ伏せることなど簡単だと、「あの国」の住民は誰もが考えていた。
確かにいくさの序盤は目論見どおりに進んでいた。
だが周辺諸国は次々に隣国の味方につき連合国となった。
その頃から戦況は一変した。
そして連合国に強力な助っ人が加わった。大陸の北でにらみを利かせる強大な帝国が参戦し、「あの国」を完膚なきまでに叩きのめしたのだ。
ところが、強大な帝国は、さらに勢力を拡大させるため、連合国へと牙を剝いた。
見る影もなくなった「あの国」は、主を失ったまま、新たな戦場となった。
劣勢に立たされた連合国は、別の大陸の傭兵を募った。
カイムは、その中の一人だった。


少年の島は中立を保っていた。島はあまりに小さ過ぎて、戦いに参加するほどの戦力もなく、逆に戦いをつづける国々から狙われるほどの富も持っていなかったのだ。
だがカイムは知っている。
戦線が拡大すれば、この島は軍事的な拠点として価値を持つだろう。どちらかの陣営が島を占拠し軍事施設をつくるか、もしくは、島を徹底的に焼き尽くして、敵が拠点にするのを防ぐか。いずれにしても、それは遠い未来ではない。
カイムはそれを伝えるために島へやって来た。
翌朝に出向する、別の島への定期便に、一人でも多くの島民を乗せられないか、と。
できれば子供たちから、島を逃げ出してほしい。幼い命が虫けらのように奪われる光景は、もう、これ以上見たくない。


「あ、ほら、見て」
少年ははずんだ声をあげて、水平線を指差した。「今夜も降りだしたよ、光の雨が」とうれしそうに言う。
夜空のずっと先のほうを、ほの白い光が染めていた。強大な帝国が、艦砲射撃を始めたのだ。
少年は、光の正体を知らない。



ゴウ、と鈍い音が天空から響いた。
「変だなあ、雷の音とはちょっと違うよ、これ・・・・・」
鈍い音は絶え間なくつづいていた。
そして、少しづつ、近づいてきていた。
カイムはハッと顔を上げ、少年に怒鳴った。
「森だ!森に走れ!」
「え?」
「早く!」
その声をかき消して、耳をつんざく砲撃の音が響き渡った。
光の雨が、降りはじめた。
島は、カイムの予想よりずっと早く、標的となってしまったのだ。
「早くしろ!」とカイムは少年の手を取った。
森に逃げ込むしかない。
「ちょっと待って、あんちゃん!」
少年は、カイムの手を振りほどいて、歓声をあげて夜空を見上げた。
「光の雨だよ!おいらの島にも降ったよ!すごい!すごい!すごい!」
はしゃいで、踊るように砂浜を駆けて、そして― 光の雨を、全身に浴びた。



ほんの一夜の艦砲射撃で、島は焦土と化した。
自分たちが持っていた「幸せ」の価値に気づかないまま、それを一夜にして奪い去られたのだと知ることすらなく、ゆうべまで島に満ちていたひとびとの命は、今朝はすべて息絶えてしまった。ただ一人、永遠の命を持つカイムを除いては。


光の雨は、今夜もまた、街に降りしきるだろう。
それを美しいと言っていた少年は、もう、あのつぶらな瞳を見せることはない。
カイムは、焼け残った小さな丸太舟に少年のなきがらを乗せた。
よく熟した「幸せの粒」を、少年の胸に抱かせた。天国への長い旅の途中、これで喉の渇きを癒してくれればうれしい。
船を海に浮かべた。
船はゆらゆらと揺れながら遠ざかっていく。
人なつっこい少年は、死に顔まで微笑を浮かべていた。それは、神様の贈った、せめてものプレゼントだったのかもしれない。
少年は旅立っていく。
「あの国」になんかたどり着くんじゃないぞ― と祈った。
どの国にもたどり着かないほうがいい。
光の雨が永遠に降らない場所。
それがこの星のどこもにもないことを、カイムは知っている。
知っているから、少年のために、泣いた。
胸の中に雨が降る。
冷たく、哀しい雨が、静かに降る。
艦隊の立ち去ったあとの空は、悔しいほど青く、広く、美しかった。










どうだったでしょう?本当に長すぎてごめんなさいバッド(下向き矢印)
永遠に生きることの哀しみ、そのまわりで散っていく命たち。こも本にはたくさんのそういった物語が描かれています。



でも哀しみだけではないんですこの本の『白い花』という物語に好きな文章があるのですが、それは、生きることを、命の大切さを書き表していました。




ひとが生まれ、ひとが死ぬ。
ひとが誰かを愛し、愛した誰かと別れる。
数えきれないほどの喜びがあって、数えきれないほどの悲しみがある。尽きることなくひととひとは争い、諍い、けれど尽きることなく、ひとはひとを愛し、許す。
歴史はそうやって積み重なっていき、過去の涙は、少しずつ、祈りへと形を変えていく。




ひとは死ぬとき、体は大地へ帰り、命は海へ帰り、思いは空へと帰る。
俺に永遠の命はない。カイムにはわからない「その時」の悲しみがいつかはくる」。それが、一年後なのか、明日なのか、まだずっと先なのかは、わからないけれど、「その時」までは一生懸命に生きようと思う。
posted by まぉ at 19:58| 群馬 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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